ChatGPTやGoogleのAI機能で調べ物をする人が増えるにつれ、「うちのような個人向けの商売にも影響があるのか」という相談が増えています。BtoBに比べてBtoCは検討期間が短く、口コミや実物の印象が判断を左右するため、AI検索の影響は業種によって出方が大きく異なります。本記事では、確認できる国内調査のデータをもとに、AI検索がBtoCの消費者行動に何をもたらしているのかを整理し、店舗やECを運営する中小企業が優先すべき対策を具体的に解説します。
- AIによる概要の影響で、日本でも検索1位のクリック率が約38%低下したという調査結果が出ている
- 生成AIとの対話をきっかけに商品購入を決めた人は54.1%に達し、AIが購買の入口になりつつある
- 影響の大きさは業種で大きく異なるため、全社で一律に対策するのではなく自社の検索経路から優先度を判断することが重要
AI検索でBtoCの消費者行動はどこまで変わったのか

まず押さえておきたいのは、変化が「流入の減少」と「購買の入口の移動」という2つの方向で同時に起きている点です。
流入面では、SEOツールを提供するAhrefsが2025年12月時点のデータを分析した調査があります。同社がキーワードデータベースから抽出した30万キーワードについて、AIによる概要の導入前後(2023年12月と2025年12月)のクリック率を比較したところ、日本では検索1位のクリック率が約38%低下し、グローバルでは約58%の低下が確認されたと報告されています(Ahrefs pte. ltd. プレスリリース)。日本の数値がグローバルより小さいのは、日本語でのAIによる概要の普及が後発であることが背景にあると説明されており、今後さらに広がる可能性が示されています。
一方で購買面の変化はより直接的です。株式会社PLAN-Bが2026年5月11日から16日にかけて、生成AIを使った検索を日常的に行う10代から60代の男女500名に実施した調査では、生成AIとの対話をきっかけに商品やサービスの購入を決定したことがある人が54.1%(前年比プラス11.4ポイント)、行き先を決定したことがある人が50.4%という結果が出ています(株式会社PLAN-B「生成AIとの対話による購買行動調査 2026」)。生成AIの利用者層に限定した調査である点には注意が必要ですが、AIが単なる調べ物の道具ではなく、購買の判断に影響する存在になりつつあることは読み取れます。
影響が大きい領域と小さい領域を分けて考える
データを見ると不安になりますが、BtoCと一口にいっても影響の出方は一様ではありません。自社がどちらに近いかを見極めることが、投資判断の出発点になります。
影響が大きいのは、消費者が「どれを選べばいいか」を言葉で相談しやすい領域です。比較検討が必要な商材、選び方に知識が要るサービス、旅行先や店選びのように条件を絞り込む場面では、AIに相談して候補を絞る行動が入りやすくなります。この領域では、AIが提示する候補に自社の名前が入っているかどうかが、そのまま接触機会の差につながります。
逆に影響が相対的に小さいのは、実物の確認や体験が判断を左右する領域です。試着や試食が前提の商品、来店してから決める性質のサービス、価格や在庫を各サイトで直接確認する日用品などは、AIの回答だけで購買が完結しにくく、最終的な意思決定は従来の経路に戻ってきます。ただしこの場合も、候補を絞る前段階でAIが使われていれば、そこに載っていない店は最初から検討対象に入りません。影響が小さいというのは「まったく関係ない」という意味ではなく、「対策の優先度を一段下げてよい」という程度に受け止めるのが実態に近いといえます。
流入減以外に見落としやすい3つの影響

AI検索の影響というとアクセス数の減少ばかりが話題になりますが、BtoCの現場では別の形でも変化が現れます。
- 比較検討の段階が短くなる:AIが候補と比較の観点をまとめて提示するため、消費者が複数サイトを見て回る回数が減ります。自社サイトに来る人数は減っても、来た人は購入意欲が高いという状態になりやすく、サイト側は「じっくり読ませる」より「迷わせず決めさせる」設計が求められます。
- 第一想起の重みが増す:AIの回答に自社が含まれなかった場合でも、消費者が自社名を知っていれば直接調べてもらえます。ブランド名で検索してもらえる状態、いわゆる指名検索の価値がこれまで以上に高まります。
- 自社サイト以外の情報が判断材料になる:AIは自社サイトの説明だけでなく、口コミサイトやSNS、地図サービス上の情報も参照します。自社サイトを整えるだけでは足りず、外部に出ている自社情報の正確さが結果に影響します。
この3点はいずれも、アクセス解析の数字を見ているだけでは気づきにくい変化です。問い合わせや来店時に「どこで知ったか」を聞き取る運用を続けておくと、実際の変化を早く把握できます。
店舗・ECが今から着手できる対策
やるべきことは目新しい特殊な施策ではなく、これまでのWeb運用の延長線上にあります。優先度の高い順に整理します。
- 自社に関する事実情報を1か所に正確にまとめる:営業時間、所在地、取扱商品、価格帯、対応エリア、よくある質問への回答などを、自社サイト上に曖昧さなく記載します。AIは書かれていないことを推測して答えることがあるため、正確な記述を置いておくこと自体が誤情報の予防になります。
- 外部に出ている情報の食い違いをなくす:Googleビジネスプロフィール、各種ポータルサイト、SNSのプロフィールなどで、店名の表記や住所、電話番号がサイトと一致しているかを確認します。表記のゆれは、AIが同一の店舗だと認識できない原因になります。
- 選び方や比較の観点を自社の言葉で書く:「どれを選べばいいか」に答えるページは、消費者がAIに相談する内容とそのまま重なります。自社商品の宣伝ではなく、判断基準を率直に説明するページを持っておくと、比較検討の場面で参照されやすくなります。
- 口コミや利用者の声を継続的に集める:AIも消費者も、事業者の自己申告より第三者の評価を重く見ます。購入後のフォローで感想を聞く仕組みを整えることは、AI検索対策であると同時に通常の集客改善にもなります。
いずれも一度やって終わりではなく、情報が変わったら更新するという運用が前提になります。特に営業時間や取扱商品の変更は、放置すると誤った情報がそのまま流通し続けるため、更新のタイミングを社内で決めておくことをおすすめします。
効果はどう確認すればよいか

AI検索の効果測定は、まだ確立された標準的な方法がありません。現時点で現実的なのは、次の3つを継続的に見ていく方法です。
1つ目は、GA4での参照元の確認です。ChatGPTやPerplexityなどのドメインからの流入を参照元レポートで確認できるため、数は少なくても推移として追う価値があります。2つ目は、サーチコンソールでの指名検索数の推移です。自社名やサービス名での表示回数が伸びていれば、AIやSNSを含むどこかの接点で認知が広がっている可能性が高いと判断できます。3つ目は、実際にAIに聞いてみることです。自社の商材に関する典型的な相談文をChatGPTなどに入力し、どの企業が挙がるか、自社の情報が正確に説明されているかを月に一度確認するだけでも、対策の効果を体感的に把握できます。
いずれの指標も短期間で大きく動くものではないため、月次で記録を残し、半年程度の幅で傾向を見る姿勢が適しています。数値が動かないことを理由にすぐ施策をやめてしまうと、情報整備という土台の部分まで止まってしまう点には注意が必要です。
まとめ
AI検索はBtoCの購買行動に確かな影響を及ぼし始めており、検索経由のクリック率の低下と、AIをきっかけとした購買の増加という両面のデータが確認できます。ただし影響の大きさは業種によって異なるため、危機感だけで一律に対策を広げるのではなく、自社の顧客がどの段階でAIを使っているかを見極めることが先決です。取り組む内容自体は、自社情報の正確な整備、外部情報との一致、選び方を説明するコンテンツ、口コミの蓄積といった、堅実な運用の積み重ねになります。オモイカネでは、AI導入支援とマーケティング支援の両面から、こうした情報整備の進め方や効果確認の仕組みづくりをご支援しています。何から手をつけるべきか迷われている場合は、お気軽にご相談ください。

